今日は父方の祖母の命日。
八年前の夕方、祖母は息を引き取った。
祖母との最期の別れはその日の朝、出勤前だった。祖母はデイサービスの職員さんに吸引機で痰を取ってもらっていて、「ババ、行ってくるね」という私に向けられた苦しそうな顔が今でも忘れられない。そのあとかかりつけの医師がやってきて母に伝えた言葉は、今日が最期の日かもしれない、だったそうだ。
その言葉とおり、祖母はその日のうちに亡くなった。
私はおばあちゃん子だった。祖母との思い出は色々あるけれど、特に記憶に残っているのは毎日風呂場についてきてもらっていたことだ。
実家は風呂場が離れにあり、極度の怖がりだった私はひとりでいるところをおばけに襲われないよう、必ず祖母についてきてもらっていた(高校生くらいまでおばけを信じていた)。祖母は脱衣所で座りながら、湯船につかっている私に昔話をたくさんしてくれた。生まれ故郷は今はダムの底にあること、小さいころから弟(厳密には姉の子供)をあやしたりしたこと、戦時中の話や製糸工場に出稼ぎに出た話、どれもとても興味深くて面白い話だった。
時々、椰子の実を歌ってくれた。私はこの歌が好きで、祖母に歌ってとほしいとよくお願いをしていた。祖母が歌う椰子の実は、おおらかでやさしかった。どんな歌声だったか今となってはよく憶えていないが、包容力のある強くてやさしい声だったと記憶している。
もうちょっと文章にしようと思ったけれど、祖母のことを思い出して涙が止まらなくなってしまった。今日はもうキーボードを打てそうにないや。