南東三階角部屋日記

四十代前半女性のひとり暮らし日記です。記録としての投稿がメイン。

5月7日 チビ

f:id:nounaikaikaku:20200507200330j:image

アパートで昼食をとったあと外に出るとブッチがいた。

 

逃げないようにそろりそろりと近づく。ブッチはこちらを警戒していたようだがすぐには逃げない。4年前、一度だけさんまの缶詰をブッチにあげたことがある。その恩を忘れていないのかもしれない。いや、それはないか。

 

 

昔、実家で猫を飼っていた。私が生まれる前からいたその猫は「チビ」という名の雌猫で、白い体に所々、黒色あるいは灰色のような模様があった。とても細い身体をしており、あまり人に媚びない、どこか飄々とした態度をとる猫であった。

 

チビはそのほとんどを家の外で過ごした。私の家族がチビを締め出したとかではなく、チビ自身、ごく自然と外に出かけてしまう奔放な性格をしていた。きっと外の世界が好きだったのだろう。フラフラと外に出掛けたと思ったら、ご飯の時間にはきっちり台所に現れるあたり、ちょっと愛らしくもあった。

 

私は特段チビを溺愛していたわけではない。むしろ、あまり接していなかったように思う。だけどチビの姿を見かけないとなんだか不安になり、母や祖母に「チビはどこ?」と聞いて回っていたことを思い出す。いつも近くにいる人や動物がしばらくその姿を見せないと不安に思うものだ。チビは私の心配をよそにご飯の時間にはちゃんと戻ってきた。

 

 

記憶が正しければ、あれは高校生の頃だろうか。時々、チビが数日間姿を晦ますことがあった。またいつもの放浪癖だろうと思ってとくに心配することはなかったが、ある日、お隣さん家の近くで痩せこけたチビが見つかった。チビはその時すでに息絶えていた。

 

あの頃の記憶は曖昧で、チビの亡骸を目の前にしたときの記憶はすでに霞んでしまったが、私の性格からするに多分すごく泣いたのだと思う。なんとなく覚えている。確かタオルで身体を包んでやって、家族みんなでお別れをしてから土に埋めた。チビはチビの母猫が眠る墓近くに埋めてあげた。あれ以来、猫は飼っていない。