昔、同級生に「サメ博士」というあだ名の男子がいた。
彼はかなりのミリタリーオタクで、クラスに友達はおらず、ずっとひとりだった。無口で物静か、見た目は失礼かもしれないが一般に幅広く「オタク」と呼ばれるような風貌で、眉毛は濃く、めがねをかけていた。席は近かったが彼とはほとんど会話したことはなく、最近の言葉を借りて言えば「陰キャ」にカテゴライズされる感じだ。
ふとしたきっかけで彼がサメ好きという噂を聞き、わたしが勝手につけたあだ名が「サメ博士」だった。そのあだ名は友達との間でしか使っておらず、彼は自分がそう呼ばれていることを知らないはずだ。
一般にオタクと呼ばれる人は、世間ではあまりいい意味に解釈されない気がする。自分の世界に没頭心酔し、積極的に他社とのコミュニケーションを取らないから、そういう風に捉えられえてしまうのだろう。一方で、その道を極めようとする凄みもあるから、まわりまわってかっこよく見えたりする。
当時の私は彼の事を変人だと思っていたが、正直に話すと、実は彼にかなり興味があった。軍事マニアとして相当な知識を持っていたし、その道の話を詳しく聞いてみたかった。
写真に写っているサメのおもちゃは、沖縄修学旅行で買ったものだ。たしか水族館で買ったものだと思う。たまたま机の引き出しにしまわれていたこのおもちゃが目に入り、20年近く昔のことを思い出して懐かしく思い、日記に書いた。
サメ博士は今もオタクなんだろうか。一生会うことはないと思うが、死ぬまでにもう一度会ってみたい人のひとりである。