歯医者の定期検診を終え、実家へ。お米をもらい、ついでに夕飯を食べてから帰ろうと思う。
実家の母の部屋には豆しばというキャラクターのティッシュボックスケースがある。たしか弟がゲームセンターでとってきた景品だ。私の記憶が正しければ、この豆しばは10年近くこの部屋にいるはず。
実家暮らしのころからそうであったのだが、私はこの豆しばを見ると無性に頭に被りたくなる衝動に駆られる。被った姿は滑稽なものだが、被るととてつもない幸福感と安心感に包まれるという、不思議な効果がある。
また、頭に被らなくとも胸にぎゅうっと抱いているだけでも癒される。
しばらく前に実家に帰ったとき、やはり同様に被りたい衝動に駆られ、念のため母に「かぶっていい?」と聞いた時のこと。母から出た言葉は「あんた、変人じゃない?」だった。私は自分のことをちっとも変人だと思ったことがないのだが、世間は私のような行為をするものに対して変人と見なすのが常なのだろうか。
誰だって、人が不思議がる癖や趣味のひとつやふたつ持っているものだと思う。そしてそれは、他人に害がなければ存分に味わえば良いのではないだろうか。
母が夕飯を作っている間、私は豆しばを被ってひとり悦に入りつつ、この文章を打っている。